殊能将之
一作一作ごとにバラエティに富んでいて、少しでも前作を引きずっていると見事にやられてしまう、 そんな印象。 でも引きずらざるをえない濃さが一作一作にあるのが何とも言えませんね。 殊能将之ベストは 「鏡の中は日曜日」、黒仏を引きずるも良し、単品で純粋に楽しむのも良し、です。


「キマイラの新しい城」(講談社文庫)
ハイキマシタ、今一番好きな作家、そして探偵ですね。 アホな言い方をすれば萌えます石動さん、 今世紀最大の萌えキャラと言っても過言じゃないですイスルギー。 それを踏まえても踏まえなくても普通に面白いです、 ドタバタ活劇に密室に歴史小説、亡霊とデッカイときても面白い、テンコ盛りだから面白くてテンコ盛りなのに面白い、 うん、そんな感じ。

「鏡の中は日曜日」(講談社文庫)
前作の「黒い仏」の後に間を置かず続けざまに手を出してしまった弊害とでも言いますか、 かなりだいぶおもいっきりめっちゃ斜に構えて読み始めました。 そこへ起きた初めの衝撃の事件、斜め上を行かれて なるものかと色んな妄想が頭を支配しましたよ、振り返ればこの時点で自分で勝手に霧の中に飛び込んだようなものですね。  霧の中を進んでいる水ダニエル君は繰り広げられる出来事に逐一反応して騙されて感心して納得して驚嘆して、と十二分に 楽しめましたとさ。 それとエンディングがすごい好きです、なんかとても微笑ましい感じが良いですね。

「黒い仏」(講談社文庫)
少し勘違いをしていました、某麻耶雄嵩氏に並ぶわけではないんですね。 共に最前線に立って 切り開いているみたいなものでしょうか、全く違う方向に進んでいるようにみえて実は近いところに立っていたかと思っても、 ふと視点を変えればもの凄い離れていたって感じなのかもね。 とりあえず基本的にあまりオススメはできません、普通のに 飽きてきて飽きてきて飽きてきた頃にどーしても読みたくなったぐらいが丁度良いんじゃないかもね、そんなところが 某麻耶雄嵩氏と同じかなと。 ほんまに変則、シリーズモノなのにこんなコトやっていいんですかと意味もなく心配です。  恣意的に解釈したら不確定性原理のパロディとかオマージュみたいな、観測者(探偵)が観測した時点で遡って創られたんですよ きっと、某京極堂の受け売りですけどね。 しかしまぁえらいモノに手を出してしまった。

「美濃牛」(講談社文庫)
ん〜こういう人大好きです、胡散臭い空気を醸し出している探偵って素敵です、初期の御手洗潔や メルカトル鮎を彷彿。 分厚い割りにサクサク進み、でもこれでもかというほど本格のお約束が凝縮され、そしてあの 探偵とくれば面白いですよコレ。 残念ながらプロローグとエピローグに出ているあの人は如月烏有と重なって見えます、 前途多難。

「ハサミ男」(講談社文庫)
そのうち某麻耶雄嵩氏に並ぶらしいと聞いたので、順序良く刊行順に手を出し始めます。 そのことが 頭に入っていた所為なのか、デビュー作は気持ち良いぐらいすっきりとした印象。 ハサミ男の正体までは何となく 辿り着けたんですがそこまででした。 終始付きまとっていた違和感を拭い去るラスト、そして見事な着地、ああ面白かった。

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